2001 年7月19~23日
日本鉛筆工業協同組合
中国天津鉛筆スラット工場見学
はじめに
   米国ストックトン市に本社を置くカリフォルニア・シーダー・プロダクツ・カンパニー(CCPC)は、1919年以来、鉛筆板材(スラット)を製造していましたが、中国製鉛筆が米国内の鉛筆シェア60%以上を占めるに至り、昨年3月1日、中国・天津市にテンシン・カスタム・ウッド・プロセシング・カンパニー(TCW、資本金700万ドル)を設立し、スラット製造部門を移転、新世紀のスラットづくりを目指すことになりました。
   そこで、当組合では、スラット輸入の多くをCCPCに頼っているところから、5月29日~6月2日のスケジュールで、中国を訪れ、TCWの工場見学を行い、インセンスシダーおよびバスウッドのスラット生産状況を調査するとともに、中国の鉛筆および筆記具事情などを視察する調査団を派遣しました。
   また、CCPCフィリップ・C・ベローズハイマー会長、チャールズ社長らとも会食をともにして懇談を行い、これまで以上にコミュニケーションを深め、有意義な視察となりました。
   なお、鉛筆工場を視察する予定でしたが、直前になってキャンセルとなり、視察ができなくなったことは残念でした。
   今回の視察では、CCPC中田憲一営業支配人に多大なご尽力をいただき、また、株式会社全通佐藤清嗣社長にはレポートの作成に協力いただき、厚く御礼申し上げます。さらに、オリエンタル産業小原峻一常務には、添乗員役を買っていただき、重ねて御礼申し上げます。

平成14年7月
日本鉛筆工業協同組合
理事長 数原 英一郎
TCWの概要
   29日、北京を経由して天津に入った調査団一行は、TCWハーベイ・ハウ・アジア担当副社長の出迎えを受け、翌30日午前8時400分に天津市内から南へ車で20分のところに位置するTCWを訪問。
   TCWでは、はじめにデビッド・ウォーターズ・海外事業部副社長から同工場のレクチャーを受けたあと、工場を視察した。
   デビッド副社長は、製材所のP&Mシダープロダクツに17年勤め、その後、CCPCに2年間勤め、2カ月前にTCWに赴任し、材木や建築材に携わって30年の経験を有する木材のベテランである。
   TCWは、敷地面積6,500㎡で、オフィス、工場、倉庫(外部にもあり)からなっており、年間生産量は、インセンスシダー・スラットが1,200万グロス、バスウッド・スラットが400万グロスの合計1,600万グロスである。
   従業員総数は1,200人、1日20時間の4交替制で、年間稼働日数は330日。
   TCWは、昨年3月1日に設立され、ストックトンから人工乾燥機以外の機械設備を徐々に移して、同6月1日から生産を開始、同8月1日からインセンスシダー・スラットの生産をはじめた。
   同6月1日からは、ストックトンでの生産中止を予定していたが、少し遅れたものの、現在はいっさいスラットの生産を行っておらず、在庫調整と若干の営業のみを行っている状況だという。
   ストックトンと同じ生産環境であるが、大きく違う点は、インセンスシダー以外にバスウッドのスラットを生産していることだ。
   現在、米国から厚さ7.5cm×幅7.5cm×長さ5mのインセンスシダーの角材をコンテナに積んで船便で運んでおり、供給面は問題がないという。
デビッド・ウォーターズ副社長から工場の説明を受ける レクチャーを受ける一行
   ストックトンから天津に工場移転させた理由については、①中国には安い労働力がたくさんある②インドネシアを含めてインセンスシダーのマーケットが縮小しており、インセンスシダー以外の中国の木材・バスウッドが利用できる③その他にも有利な点がある――としている。
   反面、デメリットとしては、①角材で米国から船便で運ぶので、運賃がかかる②また、スラットに製品化したものを日本はじめ各国に送る運賃がかかる③中国独特の問題点がある――などをあげている。
   そのために、木材の価格は下がっているものの、スラットの価格は中国で生産してもなかなか下がらないという。
   ここへきて、インセンスシダー市場が伸び悩んでいること、米国鉛筆市場の60%以上を中国製が占めていることなどを考慮すると、今後はバスウッド・スラットへシフトしていくことが予想される。
   バスウッドは、ハルピン北部やシベリアに生育しており、伐採に関しては中国政府で制限している。現在、バスウッドがどのくらい生育しているのか、森林関係者により調査中であるが、インドネシアのジェルトンがいつなくなるか、わからないように、バスウッドも不明であるという。
   しかし、バスウッドは、インセンスシダー(樹齢70~80年もの)に比べ成長が早く、樹齢40~70年ものを使用している。
   TCWでは、丸太や角材でバスウッドを購入しないで、製材メーカーから板材で購入している。これは、長距離輸送のため、丸太や角材で購入するとコストや歩留まりにムダがあること、華北には製材メーカーが100~150社あるため、板材で購入した方が経済的であるため。
   スラット工場では、米国から持ち込まれたインセンスシダーの角材を天然乾燥させたあと、184㎜のブロックに切断し、11枚の薄丸ノコが縦列に並んだタンデェム挽材機械へ送られ、それぞれ1枚の軸板に切り取る。機械や丸ノコは同社が研究開発したもので、丸ノコはタングステン・カーバイトの刃を使用し、厚さは1.2㎜で、7本取りを標準に各工程でチェックしながら、6本取り、5本取りなどに選別する。
   選別された軸板は、高圧タンクの中でワックスと染料を入れられ、高圧処理を受けたあと、人工乾燥機で乾燥され、水分およびワックスの適当な含有率だけでなく、染色にむらのない均一な色が出るように調整している。
   人工乾燥機は、24室あり、1室に7トラック(1トラックで1万枚)入り、8~12日間乾燥される。
   最終検査としては、人の目、電気、コンピュータなどにより、水分、サイズ、反りなどをチェックしている。
   また、工場内に薄丸ノコの修理や分析を行っている部署もあり、スラットの生命線である丸ノコのメンテナンス、研究に余念がない。この薄丸ノコのメンテナンスについて、移転当初は心配していたが、いまは問題ないという。
   インセンスシダー・スラットのグレード別をみると、7本取りは全体の80%で、その内、7W1が6%、7Wsが25%、7Wpが12%、7Wecoが5~10%、その他という比率になっている。
人工乾燥機を視察する一行 薄丸ノコのメンテナンス部署
角材の前で全員集合 視察を終えた一行

   天津の状況天津は、北京から南東137km、列車で約2時間の位置にあり、北京、上海、重慶と並ぶ4大直轄地の一つで、人口1,000万人を有する工業都市および華北一の対外貿易港である(TCW工場からコンテナヤードまで35km)中国筆記具市場中国には、鉛筆メーカー200社が林立しており、その年間生産量は5,300万グロス(全世界では1億3,000万グロス)に及び、国内向けが1,300万グロス、海外向けが4,000万グロスとみられている。
   北京の北京市百貨大楼の文具売場を覗いてみると、トンボ鉛筆の8900、木物語、ピングーかきかたともに3元、第一鉛筆の無地が0.6元、柄物が0.8元、バスウッド物が0.8元で販売されていた。
   その他では、ゼブラマッキーが10元、シグノが9元、ユニプロマーカーが10元、サクラクーピー18色が68.55元、サクラティアラが8元、替芯はパイロットG2が9元、ハイテックCが16元、ユニボールが11元であった。
   なお、5月31日は、北京市内でCCPCフィリップ・C・ベローズハイマー会長、チャールズ社長らを囲んで、数原理事長主催で夕食を催し、懇談をして、懇親の実を深めた。
CCPCベローズハイマー会長、チャールズ社長と懇談を
北京で一番古いデパート「北京市百貨大楼」 天安門広場前の一行

参加メンバー
数原英一郎理事長(三菱鉛筆社長) 杉谷和俊常務理事(北星鉛筆社長)
大田浩司理事(太陽鉛筆社長) 小林敬次理事(アイボール鉛筆社長)
佐々木寛次郎氏(キリン鉛筆社長) 佐々木寛次郎氏(キリン鉛筆社長)
小原峻一氏(オリエンタル産業常務) 西本洋二氏(三菱鉛筆常勤監査役)
奥山嘉計氏(トキワ最高顧問) 山内真津雄氏(トキワ工場長代理)
佐藤清嗣氏(全通社長)

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